不動産投資を始めてみようかな、と思ったとき、ワクワクする気持ちと同時に、不安にも感じると思います。
その不安の中でも一番大きいのは、投資をしたら損してしまうのではないか、ではないでしょうか。
不動産投資を成功させ、損をしないためには、ただ漠然と不安に思っているだけでダメです。
どんなことが起こると損をしてしまうのかを、ちゃんと理解しておくことが必要です。
目次
不動産投資にはなぜリスクが発生するのか?
不動産投資は、不動産を買い、不動産を買った金額以上のお金を受け取ることを目的としていますよね。
当然、そこには見込みがあります。
その見込みが具体的になったもの、つまり、どのようなお金が出ていき、どのようなお金が入ってくるか、を書き出したものを計画と呼びます。
見込み通りに物事が進まない、その原因を投資におけるリスクといいます。
では見込み通りに物事が進まない、とは具体的に何を意味しているのでしょうか。
一つは支払うお金が計画よりも大きくなってしまう。
そしてもう一つは受け取るお金が計画よりも少なくなってしまう。
計画がちゃんと作られているのであれば、この二つです。
計画よりも支払うお金が大きくなってしまうリスクは3つあります。
そして計画よりも受け取るお金が大きくなってしまうリスクもまた3つあります。
これから順番に説明しますので、しっかりと理解しておきましょう。
1.計画よりも支払いが増えてしまう3つのリスク
不動産投資は、マンションなどの不動産を買うのにまずお金がでていきます。
さらに、投資を始めた後で支払うお金もあります。
投資を始めた後の支払は不動産から得られるお金(家賃収入)を充てます。
支払いが計画よりも増えれば、不動産投資で得られるはずだった利益(利回りと呼ばれます)が減ってしまいます。
また、支払いが不動産からの収入を超えてしまう場合には、自分の貯金や給料の一部を充てることで補ってあげる必要があります。
では、不動産投資を始めた後から支払うお金にはどのようなものがあるでしょうか。
そして、それぞれの支払いはどうして計画よりも増えてしまう可能性があるのでしょうか。
1-1.金利上昇リスク
不動産を買うお金を全額、自分の貯金から支払う場合を除くと、自分の貯金から支払うのでは足りない分を銀行などの金融機関から借りることになります。
つまり借金をするわけです(不動産投資の場合、この借金を借入と呼ぶことが多いです)。
当然、借入は返済をしなければなりません。
借入は借りたお金(これを元本といいます)と合わせて金利を支払う必要があります。
この金利には、固定金利と変動金利の二種類があります。
固定金利とは借入を返すまでの間、金利が一定のものです。
変動金利とは借入を返すまでの間、金利がそのときどきの景気などにより変わっていくものです。
仮に2千万円を借り、金利が年率1%だとした場合、利息は年20万円です(話を簡単にするため元本の返済がない前提です)。
10年で返済する場合、固定金利だと10年間で支払う利息は200万円になります。
一方、変動金利の場合には、金利が変わるため10年間で支払う利息が変わってきます。
1年目の金利が1%だとすると20万円の利息になり固定金利と一緒ですが、2年目に金利が2%になると利息が40万円になります。
2年目から10年目まで2%のままだとすると380万円の利息を支払うことになります。
固定金利にすればこのリスクを避けることができます。
ですが、逆にチャンスを逃す可能性もあります。
一般に変動金利は固定金利よりも、借入をする時点において金利が安く設定されています。
また、借入の期間中、固定金利よりも低い金利で変動している可能性もあります(固定金利が1%だとして、変動金利は0.7%、0.2%のようにずっと固定金利より低い可能性もありますし、平均してみると低かったという可能性もあります)。
金利が低ければ利息の支払いが少なくて済み、結果としてより儲かる(投資の儲けをリターンと呼びますのでリターンが大きくなる)ことになります。
1-2.制度リスク
制度とは社会の仕組みのことです。
仕組みが変わると不動産投資を行っている人が支払う金額が変わることがあります。
そのため制度が変わるというリスクがあり、これを制度リスクと呼びます。
社会の仕組み、として一番身近なのは税金でしょう。
不動産投資では不動産を所有することになりますが、不動産を持っているとそれだけで税金がかかります。
固定資産税や都市計画税などです。
税金をいくら支払わなければならないのか、は投資をするときに計画に織り込まれているはずです。
それでもなお、税金がリスクである理由は、投資した後になって税金が変わる(増えたり減ったりする)可能性があるからです。
不動産を持っているだけでかかる税金が変更される(特に増税になる)と世の中の多くの人に影響があります。
そのため、税金の変更は長い時間をかけて慎重に議論されます。
しかし、増税されない保証は何もありません。
そして増税されれば支出が増えることになるのです。
また、不動産投資により儲けが出る場合には、その儲けにも税金がかかります。
不動産投資を行っている最中の儲けに加え、投資した不動産を処分した場合に儲かるのであれば、それに対しても税金がかかります。
これらの税金についても、投資した時点で計画している税金の仕組み自体が変わってしまうリスクがあるのです。
税金以外の制度リスクには、保険料の変更があります。
不動産は火災保険や地震保険などをつける場合、保険料を支払う必要があります。
保険の期間が不動産投資よりも長いのあれば問題ありませんが、通常は途中で保険契約の更新が行われます。
その際、保険料が上がってしまうリスクがあります。
1-3.設備投資リスク
投資する不動産には普通、設備がついています。
マンションであればキッチンやお風呂、トイレなどです。
これら設備に関して出ていくお金が変わるリスクがあり、これを設備投資リスクと呼びます。
自分の投資した不動産の設備が使えなくなれば、自分で修理したり、新しいものに取り換えたりしなければなりません。
当然、設備を修理するのにも、取り換えるのにもお金がかかります。
設備が使えなくなる原因は様々です。
普通に使っているだけでも、いつか壊れてしまいます。
普通に使って壊れてしまうものは計画におおよその時期と金額を織り込んでおくことができます。
しかし普通に使っていたら壊れてしまう、以外の原因で壊れてしまうこともあります。
その一つが災害で壊れてしまう場合です。
地震の被害は改めて思い出すまでもなく、数年に一度は耳にするものです。
また、火災が起これば設備は焼失してしまいます。
さらに、2019年には台風で大きな被害がでましたが、水漏れなどによっても設備が壊れてしまいます。
設備にお金がかかるのはこのように壊れてしまって取り換える場合だけではありません。
自分が部屋を借りようとしたときを想像してもらえればと思うのですが、その設備がないと借りたくならない、ということがあります。
例えば、オートロック。あるいはインターネット用の回線。
オートロックも、インターネット用の回線も、昔はほとんどの人が必要としていませんでした。
しかし、時間が経ってみるとその設備がない部屋には住みたくない、と思われてしまうのです。
このような設備は自分でお金を出して不動産に追加する必要があります。
また、設備にお金をかけることで、将来の収入を増やすことを狙いに行く場合もあります。
一例として、部屋に防音工事をすることがあります。
ピアノなどの楽器を演奏したい人が、より高い家賃で借りてくれる、ことを狙うわけです。
このように設備のためにかかるお金は発生するかどうか、具体的にいくらになるかを計画時点ですべてを見通すことができないのです。
2.計画よりも収入が減ってしまう3つのリスク
出ていくお金があれば、入ってくるお金もあります。
この入ってくるお金が計画よりも減れば、不動産投資で得られるはずだった利益(利回りと呼ばれます)が減ってしまいます。
また、収入が出ていくお金を下回ってしまう場合には、自分の貯金や給料の一部を充てることが必要になってしまいます。
では、不動産投資で入ってくるお金(収入といいます)にはどのようなものがあるか、それ
ぞれの収入はどうして計画よりも減ってしまう可能性があるのか、を順番に説明します。
2-1.空室リスク
不動産投資は、何よりもまず、買った不動産を誰かに貸し出し、その借り賃(マンションであれば家賃)が収入となります。
誰かに借りてもらわないことには収入が生まれないのです。
言い換えると不動産を貸し出りてもらえないリスクがあります。これを空室リスクと呼びます。
空室リスクが発生する理由はいろいろとあります。
これも自分が不動産を借りる場合を想像してもらうのといいと思います。
駅から同じような距離、同じような広さの、建物が建てられてからの年数もほぼ同じ不動産があって、片方が安ければそちらを選ぶでしょう。
このように家賃が原因となるケースがあります。
家賃が同じでも、自分の欲しい設備があれば、そちらを借りるでしょう。
このように設備が原因となるケースがあります。
自分の住む部屋そのもののではなくても、同じマンションの近くの部屋で事件があった場合、その建物にはあまり住みたくりません。
このように周辺の環境が原因となるケースがあります。
自分の投資した不動産が借りられなかった方だった、と想像してみれば空室の発生する理由を理解できます。
空室リスクが発生するのは、このような自分の投資した不動産に理由があった場合だけではありません。
自分の投資した不動産の近くにあった工場が閉鎖されてしまった場合、その地域に住みたい人が減ってしまうこともあります。
そうすると、借り手が見つからないことがあります。
また、借り手を見つけるためには不動産屋に依頼する必要がありますが、その不動産屋に問題がある場合(不動産屋のお客に対する態度が悪い、あるいは自分の投資した不動産を積極的に紹介してくれないなどなど)にも借り手が見つからないことがあります。
2-2.不払いリスク
不動産の借り手が見つかったとして、それでもお金が入ってこない場合があります。
借り手が家賃を支払わない場合です。
そんなのおかしい、と思う気持ちはよく分かります。
しかし、現実には家賃が支払われないことは決して珍しいことではありません。
家賃が支払われない原因は借り手の問題なので、借り手の数だけあるといえます。
面倒で家賃を支払わない人もいます。
何か借りている不動産に不満があって家賃を支払わない人もいます(水漏れしているからそれが直るまで家賃を支払わない、など)。
お金がなくて家賃が支払えない人もいます(病気になって働けなくなった、などなど)。
常識としてはもちろんのこと、法律の面からも許されることではありません。
しかし、病気などでお金がない人からはどうしたってお金を取ることができませんし、不払いのまま逃げてしまった人からお金を取ろうとすると、見つけ出し、支払ってもらうまでに逆にお金がかかってしまうこともあります(弁護士に依頼すると依頼料がかかりますし、裁判をすれば裁判費用がかかります)。
不払いには、家賃に加え、もう一つ問題があります。
貸している不動産を傷つけられたら、借りている人がお金を出して直すよう求める権利が貸している側にはあります。
例えば、一度借りた不動産を、引っ越して出ていくとき、借りていた人に対して不動産を借りたときの状態に戻すよう求める権利があります。
壁に穴をあけられてしまったら、その穴をふさいでもらうか、ふさぐのにかかるお金を請求できます。
あるいは別の例として、借りている人の責任で火事が起こり、建物が焼けてしまった場合、借りている人に建物を建て替えてもらうよう要求するか、建て替えるためのお金を請求する権利があります。
このように権利があって借り手にお金を請求できる場合にも、そのお金が必ず支払われる、とは言い切れません。
不払いリスクの問題は、お金を払ってもらえないことに留まりません。
不払いの解決にはどうしても時間がかかります。
追加のダメージになるのは、不払いが解消するまでの間、その不動産を他の人に貸し出すことができないことです。
入ってくるはずのお金が入ってこない、に留まらず、追加で入ってくるかもしれなかったお金をもらいそびれてしまうのです。
2-3.マーケット変動リスク
不動産投資で入ってくるお金は家賃のほかにもう一つあります。
それが、投資を終え、不動産を売却したときに入ってくるお金です。
家賃、不動産を売却するときのお金、どちらも投資した時の計画通りにならないリスクがあります。
このことを理解するためには、まず、家賃や不動産の売却で入ってくるお金がどうやって決まるのか、を知っておきましょう。
不動産に限らず、モノの値段は、ものすごく単純に考えると、その値段でもほしい人がいるか、によって決まります。
売る方はなるべく高く売りたいので、その値段でも売れる値段をつけるからです。
ブランド物のバックは、イオンで買えるバックよりも高額です。
これはその値段で買いたい人がいるからです。
そのブランドの人気が落ちてくるとほしい人がいなくなるため、値段は下がってきます。
ブランドの人気が高まれば、もっとお金を払ってでも欲しいという人が出てくるため、値段は上がります。
不動産の家賃や売却のときの値段も同じように、その不動産に住みたい人が増えれば値段が上がり、住みたい人が減れば値段が下がります。
このように人気のあるなしで値段が変わることをマーケット要因といい、マーケット要因で値段が変わってしまう可能性があることをマーケットリスクと呼びます。
不動産のマーケットリスクは、大きなものと小さなものの二つがあります。
大きなもの、はいわゆる景気です。
景気が良いときには不動産の値段が上がり、家賃も上がります。
景気が悪いときには不動産の値段が下がり、家賃も下がるのです。
小さなもの、はその不動産に人気があるか、です。
その不動産に人気があるかどうかは、周りにある不動産と比較して、条件が良くなったり、悪くなったりすることで変わります。
もっと言えば、自分の投資した不動産よりも人気のある不動産がどれだけあるか、によります。
自分の投資したマンションよりも駅から近い場所に新築のマンションが建った、という例が分かりやすいのではないでしょうか。
そのマンションが人気であれば、自分の投資したマンションの人気が下がってしまいます。
あるいは、自分の投資したマンションの近くにあったバス停が移動してしまった場合、移動した先のバス停の近くのマンションの人気が上がる一方、自分の投資したマンションの人気は下がってしまいます。
もちろん、逆に、自分の投資したマンションの近くに道路が開通したような場合、人気が上がるケースもあります。
3.投資にまつわるリスク
ここまで、不動産投資にかかる、出ていくお金が計画とは異なるリスク、そして入ってくるお金が計画とは異なるリスクについて説明してきました。
しかし、不動産投資には、「投資」にまつわるリスクがあります。これは不動産に限らずどんなものであれ、投資をする上で知っておかなければならないリスクです。
それは計画通りに物事が進まないリスクよりもっと根本の問題です。
具体的には投資として成立していないリスク、そして計画が間違っているリスクです。
3-1.投資として成立していないリスク(詐欺リスク)
投資するというのは、投資の対象であるもの(不動産投資であれば不動産)を購入しなければ始まりません。
ところが、お金を払っても、投資の対象を買えていないことがあります。
いわゆる詐欺に遭ったケースです。
これを詐欺リスクといいます。
詐欺に遭ってしまうと、当然のことながら絶対に投資は失敗します。
受け取るお金が発生しないからです。
不動産投資は、他の投資に比べると詐欺に遭う可能性が低い投資と言えます。
なぜなら、投資する不動産は存在していて、自分の目で見て確かめることができるからです。
また、投資するときには、登記簿を確認することができます。
登記簿とはその不動産の持ち主を記載して公的機関(全国各地の法務局)が管理している帳簿です。
登記簿を書き換えるためには司法書士に依頼しますし、不動産の取引には宅建業取扱主任者という国家資格を持っている人が関与することが一般的です。つまり不動産取引には、たくさんの専門家が関与しています。
詐欺を行う方からしても詐欺であると発覚するリスクが高いのです。
しかし、2017年には積水ハウスという大手不動産会社が詐欺に遭い、数十億円という莫大な損失を出しています。
決して起こりえないことではない、ということは知っておく必要があります。
3-2.計画が間違っているリスク
投資をする時点での計画は、その通りに進むという保証はありません。
そのうまく進まない原因をリスクと呼び、そのリスクにはどのようなものがあるのか、ここまで説明してきました。
しかし、そもそもの計画が、明らかに間違っているケースがあります。
間違いは、お金が出ていくこと、入ってくること、それぞれについて起こります。
出ていく方の間違いは、投資した時点で条件が決まっているものを見落としているケースが多くあります。
例えば、税金や金利について一切、計画に書かれていないことがあります。
またマンションの修繕積立金が増額されていると決まっているのに、計画には現在の修繕積立金が将来にわたって見込まれている、こともあります。
一方、お金が入ってくる方の間違いには、現在の状況を正しく反映していないものが多くあります。
近くの同じような不動産に比べて家賃がとても高く設定されていることもあります。
投資を終えて不動産を売却する時点で、買ったとき(つまり今)よりも高値で売れる計画となっていることもあります。
一概に間違いだとは言い切れませんが、特殊な事情がない限り不動産が古くなればなるほど価格は下がるのが一般的です。
計画が間違っている場合は、詐欺の場合と比べて、投資が絶対に失敗する、ということではありません。
しかし、思っていた利益がでないことになるのです。
4.まとめ
投資を始めるときは期待とともに、たくさんの不安があるでしょう。
その不安はリスクについて正しく知ることで解消すべきですし、解消される前に投資を行うべきではありません。
ちゃんと不動産を買い、見落としのない事業計画を作れていれば、不動産投資のリスクは大きく出ていくお金、入ってくるお金、それぞれではっきりしています。
投資ではよく、リスクを取らなければリターンはない、といいます。
リターンとは儲けのことで、リスクがあるから投資は儲かるのだ、ということです。
リターンを得るためにも、リスクについて正しく知った上で不動産投資を始めましょう。